掃き溜め

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突然だがKING OF PRISM、通称キンプリという作品をご存知だろうか。
 
 
 
キンプリと言ってもジャニーズの若手グループではなく巷で話題の劇場作品の方だ。どの程度話題かというと、某検索エンジンの映画評価ランキングでは、5を満点とした際に4.7という脅威の数字を叩き出し、公開劇場数が初日が8箇所と僅かでありながら、その上映1回あたりの平均動員数はスターウオーズ以上の推移を見せた、などという事が一例として挙げられよう。(要出典)
これだけ見ると、有名ハリウッド映画の監督がお遊びで作った最高傑作だとかオスカー賞候補だとか想像してしまいがちだが、キンプリはまごう事なき日本の短編アニメ映画なのだ。一体何者なんだキンプリ。
 
今回のこの項では、キンプリの基本事項を説明した後、先日私自身が体験してきたキンプリや「プリズムのきらめき」についてまとめていこうと思う。この作品で少しでもキンプリについて興味を持ってもらえると幸いだ。
 
 
 
そもそも、キンプリとは一体どういった作品なのか。公式ホームページには「女児向けアーケードゲームが原作のアニメ、『プリティーリズムシリーズ』(以下プリリズ)が云々、その男性キャラが云々」などと書いてある。
(女児向けと表現されているが、制作側はこの作品は全年齢対象だとコメントしている。実際、大人が見ても娯楽としても哲学としても楽しめる不思議な作品ではあるのだが、括り故そういう風に見られても仕方のない部分もあるのだとは個人的に思う。)
 
プリリズは3部作であるが、今回のキンプリの主軸になるOver The Rainbow(以下オバレ)は、その3作目『プリティーリズム レインボーライブ(以下プリリズRL)』の登場する男子アイドルによって構成されたグループだ。
女児向け、という文字から察せられるように、プリリズRLの主人公や主な登場人物は中学生の女児ばかりである。その中のサブキャラに思われてもおかしくないオバレの活躍を描いた今作は異質だと感じるかもしれない。しかし、その思い込みは完全に否定されるべきものなのである。
 
プリリズRLは成長の物語だ。主人公と彼女を取り巻く6人の少女たちの成長が51話を通して描かれていく。しかし、成長したのは彼女たちのみだけではない。速水ヒロ、神浜コウジ、仁科カヅキ。この3人のプリズムボーイズの葛藤と成長も、彼女たちのストーリー同様、あるいはそれ以上に濃厚に描かれてきた。
それを特に象徴するエピソードは、プリリズRL最終回での新曲が主人公たちガールズのものでなく、まさかのオバレデビューソングだったという事実だけで充分であろう。女児向けで最終回がまさかの実質野郎メイン。本来なら批判を受けるであろう一件だが、51話を通して描かれた彼らの成長の結果を否定する者はいなかった。そんな彼らの新曲は大きな反響を得て、さらなるうねりを生み出し、今回のスピンオフへ繋がっていく。(ルート4のこととかあるけどプリリズの歴史書くの面倒になってきた)
 
ここまで長くなってしまったが、一言でまとめると「キンプリは女児向けアニメという観点で見ると、男子が主人公になってしまった意外すぎるスピンオフ作品」ということになる。文字だけ見ると非常に三流映画感が漂うが、実際のところどうなのか。そして、どうして見た感想が「キンプリを見てください」のみになるのか。次はこの謎を残念すぎる私の感想とともに考えていこうと思う。
 
 
 
一言で言えばヤバい、電子ドラッグだ。
かねがねからそのように噂で聞いていた。実際プリリズRLのころから酷かった(褒めてる)し、黄薔薇の民(本編中でヒロ様のファンは物理的に黄薔薇になるのだ)としてCDも円盤も買い続けた私と母としては「まあそうだろうな」程度の考えでいた。当然オバレのステージが楽しみではあったが、周りの人程楽しめるのだろうかという不安があった事は否めない。
 
しかし、その不安は開始3分にして星座になって消えた。私の噛んでいたガムは、興奮のあまり大量分泌された唾液によって溶かされていた。このような経験は誰もした事がないだろう。私も人生初だった。
男の投げキスやら全裸のハグやら業火によって消し炭になることやら、そんなことは分かってはいたものの笑いを堪えるのに必死になるあまり眉間に皺が寄る私に向かって、隣の普段お笑いなどで笑わない母がボソリと
「これあかん面白いやつやダメやこれ」
と伝えてきた。同じ気持ちだった。その頃画面では自転車が空を飛んでいた。何も分からなかったが、公道での2人乗りは禁止だという事だけは理解できた。ヒロ様の言う事は絶対。
 
本編は60分間の短めな構成になっており、主人公らが目指す肝心のキングプリズムカップの様子は全く描かれる事のないまま終わっていく。しかし、ストーリーとしては濃厚だ。
オバレのライブでプリズムショーに初めて出会った主人公の少年一条シンが勢いのまま、かつてのプリズムショー教育の名門エーデルローズに入学する。謎の少年如月ルヰとの邂逅やらスローモーションのハグやら同じ寮の仲間との出会いやら憧れの先輩との出会いやら、まあとにかく色々なことがあり、その度に頬を赤く染めて全裸になりながら、彼はプリズムショーの魅力にとりつかれていく。
 
 
このような本編の内容について全て触れることは物語に触れる前の人々にとって下世話であろう。そうは分かっていても、本作のテーマである「プリズムのきらめき」について触れずして本作の魅力を語ることはできない。テーマについてのネタバレなど、映画批評においてナンセンスであることは分かっている。しかし、このテーマが本編中に一貫して描かれているからこそ、この点について触れずして魅力を伝えることは不可能だと判断した。
 
「プリズムのきらめき」とは何なのか。それは私にも分からないし、恐らく本作を見た誰もが言葉にするのは難しいものだと考えていると思う。物質でも、感情でもない。しかし、人々がそれをイメージすることにおいて、間違いなく共通項、そして解決のきっかけになるものが「プリズムショー」だ。
プリティリズムの世界において大流行のフィギュアスケートとファッションショーを融合させたような本競技は、スポーツというよりも大衆娯楽的なものとして親しまれている。実際にオバレのメンバーも、単に歌を披露するのではなく、プリズムショーを行いながら歌い、見せ所である「プリズムジャンプ」によって人々を魅了する。
 
このプリズムジャンプが「プリズムのきらめき」の具体的イメージの一端でありながら、本作の見どころでありつつも、本作の理解を困難にする最大の問題点なのだ。
先述した『男の投げキスやら全裸のハグやら業火によって消し炭になるやら自転車が飛ぶやら』もその例であるが、本編が後半に差し掛かると、更に文面による理解が困難になっていく。
 
ネタバレになることを承知で例を更に挙げると、
・炎が吐く龍が2体も出てくる
・大剣の攻撃をシックスパックによって防ぐ
・その結果プリズムショー中に爆発し防護アーマーが砕けて全裸になる
・男性の臀部からハチミツが出てくる
・全裸の少年が赤い糸でぐるぐる巻きになる
などがある。理解できただろうか。いや、不可能だろう。しかし、これ以上の説明は言葉という手段ではできない。この時点でプリズムジャンプ、つまり「プリズムのきらめき」は概念であることが分かると思う。
 
ここまで読むと、キンプリは話題作と言われても所詮コメディー映画なのか、と感じる人々もいるかもしれない。それは大きな間違いだ。
先ほどから話題になっているオバレだが、プリズムスタァとして輝かしい彼らの活動が存続の危機を迎え、3人がどのような選択をするかが物語の主軸に関わっていく。その状況の詳細はここではあえて触れないでおこう。
 
本編のクライマックスで、彼らはある選択をする。そして、彼らはいつものように大衆を楽しませるために「プリズムのきらめき」に満ちたプリズムショーを行うのだが、この様子が涙を誘うのだ。特に、ギリシャ神話の神々がハリウッド行きの銀河鉄道の発車を涙ながらに見守り、終いに星座になるシーンでは、涙が止まらず嗚咽まで出る始末だったが、隣を見たら冷淡な母も同様に号泣していた。あの空間であのシーンに涙しない人間がいるのか疑問である。あの絶望的なシーンから、物語は感動のクライマックスを迎え、人々はプリズムのきらめきに包まれる。ああそうか、きらめきとはプリズムショーを初めて見た時の高揚感なのだ、と我々は一条シン君を通して感じることができるのだ。この概念に名前を付けるのは無粋だといえよう。ありがとうキンプリ。
そしてED後の映像にただならぬ怒りを感じて帰るのだ。Prideを一番上手に歌えるのはヒロ様!!!個人的な話になるが、私は映画鑑賞後に、ショックのあまり蒼井翔太くんさんの声を聴くことができなくなっている。(2月12日追記:やっと聴けるようになったがまだ完全回復には時間がかかりそうだ。)彼の声に罪があるわけではないのだが、やはり辛いものは辛い。

 
 
 
この文章をキンプリ未視聴で読んでいる方々は、正直言って全く理解が追い付いていないと思われる。書いている私自身そうなのだから、きっとメンヘラの戯言レベルにしか受け取って貰えないかもしれない。しかし、ここに書いてあることは全くの事実であるし、本編の見所の半数以上に触れているというのもまた事実だ。ネタバレのはずがネタバレではない。「プリズムのきらめき」を感じることで身体と心に沁み渡らせる。これがキンプリの在り方だ。
陳腐な表現になってしまうが、この作品に少しでも興味を持っていただけたなら、一秒でも早く鑑賞する事をお勧めする。
今、世間では「プリズムのきらめき」が消えつつある。当たり前すぎて、その存在に気付けていない人々も多い。だからこそ興味を持ったのならば、世間に新しいアプローチをしようではないか。再び世界が輝きだす、その日を迎えるために。
 
 
 
ここまで長々と書きましたが、言いたいことはただ一つです
キンプリはいいものだから見てください
 
 
ここまで読んでくださってありがとうございました!グロリアシュヴァルツ!